「高島平 TANKS HUB」 M2飯田湖波


高島平団地のインフラ供給を担っていたガスタンクのコンヴァージョン。巨大スケールで特異な形のガスタンクを、風景の一部を担う「第二の自然」と捉え、人々が訪れる空間としてリデザインした。3棟のタンクはスポーツや文化の地域施設となりながら、球体のなかという非日常的空間を体感できる場所となる。土木・産業建造物を対象に、学部から一貫したテーマが表現された異色作。



「 郷愁 」 B4唐沢 祐佳


作者が幼い頃から身近に感じていた諏訪湖。その湖畔と山間の2箇所を敷地とし、風景と一体化する空間体験の媒体となる建築を設計した。湖畔の船着き場は、湖面にゆるやかに浮かぶ大屋根が凛としたシルエットをつくる。山間のゲストハウスは、地形に沿い分節されたボリュームを移動するなかで、眼下の湖と近景の山々が幾重にも感じられるよう意図している。
 


奨励賞 「文化に浸かる~銭湯の新たな価値~」 B4小泉 大季

空間を定義づけるために役割が規定され、意識の外に追いやられてしまう柱や壁、扉など、様々な要素。それらを抽象化し、自律性を与えようとした。
普段体感しているスケールを取り除き、新たに様々なスケールを与え、複雑に配置することで、一つの物に対して二つ以上の意味を与える。

抽象絵画が形や色で芸術家自身の主観的な世界を表現し、現実世界を超えようとするように、建築においても、空間を構成するあらゆる要素のスケールや空間認識を変形させることによって、主観的に空間のイメージを捉えることが可能となるのではないか。「形態は機能に従う」のではなく「人は形態に従う」空間をつくり上げた。



「ざくざく小学校」  B4佐藤 和平

作者の母校、福島県二本松市の小学校建て替え計画。小学校=地域施設という観点で、「食」をキーワードに小学校・メディアセンター・給食センターを複合、コンセプトと建築の形はともに郷土料理「ざくざく」に発想を得た。主従の区別なく各食材がさいの目に切られ混じり合って美味しくなるように、角度やズレを持ち込むことで空間のあらたな相互利用を誘発する。



「灯の麓」  B4中村 陽南

 
神奈川県三浦市城ヶ島灯台公園のリニューアル。本来の用途を終えた灯台を、海や空が織りなす風景の一部として再生する。ギャラリー・レストラン・ホールおよび宿泊施設からなる建築は、階段を登るうち見えてくる景色・壁のみで構成される空間・シークエンス・開口による景色のトリミング を意識して設計され、遠景では目立たず近づくと存在感が強まる洞窟的性格を持つ。

 


「優しい忘却」 B4村上 楓

岐阜県各務原市瞑想の森公園墓地内に計画された、遺品を通した別れの場。死者と本当の別れをする体験として遺品整理を捉え、遺品の一時保管とお焚き上げの場所を建築化した。歩を進めるにつれてだんだん内向していく感覚・心理に沿い、共振する空間が連なる。浮かぶ方舟と地中に埋もれた塊という対比的構成は、様々なシーンに解体され、忘れがたい体験に昇華する。
 


奨励賞  「都市のレタッチ-土木的スケールと人間の行為がつくる可能性ー」 B4山下 千彩貴

国立市大学通りに架かる歩道橋周りにサードプレイスを創出する試み。歩道橋ブリッジ部の床をスロープに変え1000mmの梁せいの間で操作するだけで、土木スケールのなかに人が佇む場所を生み出した。既存の歩道橋が交通動線に終始せず広場的様相に変わり、多様でテンポラリーなアクションを受け入れる拠点となることが最小の手法で明快に示されている。



優秀賞・奨励賞「 道と径-見ている風景の集まり」  B4ワン ジーイエン

中野駅北口ブロードウェイ東隣の新仲見世商店街に、昭和の面影が残る場所性を尊重しながら、あらたな人と活動を誘導し界隈を更新する建築提案。路地と横丁の事例調査から導いた「道」に関連するサンプルエレメントを実践的に各所に仕込み、改修と新築を合体させて、路地が立体的に延長したかのような建築を創出。力強く一貫した独特の作風の表現が印象的な作品。



銀賞   「東京牧場-新たな地域の可能性を生み出す 80歳の牧場を通して」 B4高橋 一孫

東京練馬区に唯一残る牧場の改築。都市部で牧場を営む難しさを取材しながらも、街なかにあることのポテンシャルを重視、地域とつながる牧場を目指した。生産・加工、消費さらに教育を含んだ場として近隣に開く空間を設けながら、牛を放牧できるパドックを新設、牛舎の性能も高めている。シンボリックな円形ヴォイドと既存牛舎の骨組が構成の核となっている。



「ODAIBA FLOW」 B4ベク スンゴン

お台場海浜公園、ビーチに隣接して建つ既存施設のオルタナティブデザイン。用途や機能をまとめて箱にしたような建築ではなく、周辺の景色やビーチでのアクティビティに呼応する環境造形としての建築を構想した。ゆるやかなスロープは散策やランニングコースの一部ともなり、屋上まで人々をスムーズに導く。純白の有機的形状は海、空と光に呼応し自由な感覚をもたらす。
 


 




「光か影か、」   B4 三田 陽子

日常意識から排除されがちな暗い環境。その暗い環境を見直すため、光と影を再認識する体験を誘発するインタラクティブなインスタレーションを計画・制作した。予想とは違う光と影の関係を生み出すため、天窓のある真っ白な空間には光の三原色を模した単色光を三方向から投影されて、入った人の影は着色され、天窓から作られるそれとは別の方向に伸びてゆく。