「港湾空間における複合-建築を介した場の知覚の可能性-」 M2 大瀧悠人  


静岡県清水港の埠頭リニューアル計画。クルーズターミナルと港湾事務所、津波防災としての防潮堤整備に加え、市民・船客や港湾関係者が憩えるあらたな公園的場所の創出を目指した。どこからがランドスケープでどこからが建築かわからない様相が意識されている。細長いプレートが折り重なり、緩い勾配で繋がる建築はボリューミーな外形を持たず、木デッキが張られた屋上やテラスなど自由な行為を喚起する場の連なりとしてそこにある。防潮堤も独立した壁状とせず建築計画と一体化して処理している。




優秀賞「自己切断の時代における回帰のメルクマール-地理多様性の保存と身体と世界の再物質化をもたらすもの-」 M2 甲津多聞 

現代社会において失われた身体性・場所性の再構築(再物質化)を試行した作品。作者は思想家P.ヴィリリオの批評に共鳴し、ブンカー(第二次大戦時の海岸防衛の砦。コンクリートの塊)を中心としたアーキタイプの研究を経て、辺境の地に種子銀行を設計した。ブンカーの形体エレメントが再編集されたセメントの模型はオブジェとして強い存在感を放ち、白い配置模型は地形と建築の構成上の関係を俯瞰的に示す。そこに計画地を歩く実写映像が加わった重層的な展示は一貫性と高い完成度で、作者の志向する内容をよく伝えるものとなった。



「日常の段差-TOFUにつめた空間-」 M2 四本 美紀

意図せず腰掛けたり肘をついたり登ってみたりするstep(段差)のアフォーダンス。作者はムサビキャンパス内に点在する階段・腰壁などを実測、多様な行為に応える場所を抽出した。制作は、実測箇所のなかから5種類をボリュームに還元して組合わせた原寸の空間で、体験者によって異なる意味(障害物、机、椅子など)に捉えられることを観察する媒体である。再構成された段差群は箱のなかに納まることで室内空間的コンテクストを形成する。



金賞・優秀賞「Live on -場所性と共に生き続ける建築-」 B4 井出彩乃

場所は新宿ゴールデン街、既存の魅力的な場所性を守りつつ街を更新していく提案。路地にひしめくマッチ箱状木造建物の隙間に配された7基の階段は、火災時消防車と接続し上から散水する設備。その壁柱は防火や既存建物補強に役立ち、光を反射し路地や室内に届ける。煙突効果で通風を促すガラスの縦動線は屋根裏のギャラリーへ繋がり、階段とともに新しい風景の要素となる。



島の透間-飛島総合センター・小中学校複合計画-」 B4 木本汐音

山形県唯一の離島・飛島。人口減少が進む場所にあるべき公共空間を検討、島外の来訪者のための宿泊機能を備えたコミュニティセンターと小中学校を一体化した。異なる目的で訪れた人々が同居し、時には交流もできる。建築は、単一のシステムで多様な規模の空間を形成する木造軸組架構で、平屋の回廊形式がゆるやかな一体感とプランニングのフレキシビリティを生む。 


銅賞・優秀賞「茶室 -繭-」 B4 鈴木真知子
 
大学4年間続けた茶道の集大成として制作した茶室。新しい世界に飛び出す直前のサナギがまとう繭をモチーフに、無数の白い毛糸によって茶室とアプローチの路地を作り出した。天窓から筒状に下がった白い垂壁(コルビュジェの言う「光の大砲」)から茶席に自然光が注がれ、白い毛糸がその光を反射拡散させてゆらぎあるやわらかな場を形成する。路地から見ると茶室全体が光を孕んだ繭として感じられ、座すとその光に包まれる。



奨励賞「建築がちょっと楽しくなる展示」 B4 高田雄大朗

いわゆる建築設計ではなく「建築が専門でない人が、建築との感覚的距離を縮める」ことを目的とした企画・設計・制作。建築の各部のかたちに理由があることを、クイズ形式の体験型展示で伝え、理解してもらう。一方から覗くと不思議な形(質問)が、もう一方から覗くと形の意味や思い(回答)が見えるよう建築模型とボックスを順々に配置、最後は建築学科同級生たちの卒業制作展示へ誘導している。


「八王子駅再開発」 B4 紋谷洋子

地域や利用者の特性でその意味合いを変えることができ、都市の核ともなる駅の計画。駅と駅ビルを一体化した矩形ボリュームの真中に巨大なトンネル状のヴォイドを設けてコンコースとし、駅ビル各所のアクティビティが表出するようにした。鉄骨の斜材とガラスが幾層にも重なるヴォイドを人々が行き来し、また各所からヴォイドを見下ろしている光景が展開、街そのもののような駅が生まれる。


「3.11 memorial museum」 B4 伊藤愛希

作者自身が宮城県出身ながら震災の記憶が遠ざかるなか、「今ある美しいものを最大限に味わえる場」としてのメモリアルミュージアムを構想した。場所は松島海岸駅前に設定。島々が連なる松島独特の地形と絡み合わせて有機的形状の建築を設計しながら、周辺のランドスケープデザインも同時に行った。震災以前から愛されてきた故郷の景色を建築で切り取る試み。



「Tosu public market station」 B4 鵜川雅幸 

JR鳥栖駅前の駅前街区を再編して卸売市場と一体化した広場界隈を創設する計画。駅東西を繋げ歩行者空間を整備し、巨大な市場施設を隣接させてその一部(売場)を駅前広場に開く。敷地全体に広がる分節された屋根は、既存の周辺街区とスケールを調停しつつ場を規定し、内と外が連続した多様な居場所を創り出すと同時に、駅前の景観をアップデートし都市の新しいシンボルとなる。



「旧海雲台(ヘウンデ)駅舎および廃線エリアの再生プロジェクト」 B4 キムヒョンモ

釜山市ヘウンデ区は廃線跡地を活用し大きく変化しようとしている。現実の基本計画が抱える問題を再検討し、旧駅舎を保存活用しながら地域や観光客に開いたギャラリーと公園を計画・設計した。細長い線路跡地に建つ稲妻型平面の建築は、商業、イベント・交流、創作・体験のゾーンに分かれ、真中のゾーンで既存地下鉄駅と直結する。旧駅舎はその動線に連結、場所の記憶を伝える。



「daily hospital」 B4 櫻田一吹

田園調布中央病院リハビリテーション科と公共施設の複合施設。日常生活に近づくような病院の取組があるなか、患者とまち、また一般住民の日常生活と病院との距離が近づき病院があたらしいまちの居場所になることを目指した。駅への動線上に位置する敷地に公共的機能を配し、総合病院から分節したリハビリテーション科の機能を絡ませた。場面に応じ両者が接近し、ひとつの場所を共有する。