Takahashi-Studio

2010.8.1-2
2010年度ゼミ旅行
高橋ゼミ 岐阜ゼミ旅行2010
8月1日-8月2日の2日間、岐阜へゼミ旅行に行ってきました。
8月1日 (火) 豊田市生涯学習センター  
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                   豊田市美術館  
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                   愛知県立芸術大学
2日(水) 瞑想の森  
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             羽島市庁舎   
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             多治見中学校  
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             セラミックパーク美濃

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2010.8.1-2
旅行後、各建築についての対談 (1)
訪問建物批評

生涯学習センター逢妻交流館  星野×新国×百野×湯浅

星野 まずは感想的なところから。中から外がよく見えるしその逆もで、妹島さんのプレゼンボードや模型のイメージと実際の建築がすごくつながっているなと思いました。
新国 最初は、プランもかわいいしコンペの時のボードの印象も軽快な印象を受けていました。でも、やっぱり規模のせいもあるのかずんぐりした外観になっていておしいなと思ったのが正直な感想です。でも、建築の内部がすごい抜けていたのは広がりを感じれてよかった。
百野 中を歩いている感じの空間体験は面白かったですけど、もう少し平面的な規模が大きければ良かったような気がします。
星野 ずんぐりした印象は、写真で見ていたときのほうが特にそうですね。平面的な規模が大きくてもう少し平たい感じになったら、ずんぐり感は減ったかもしれない?一層ごとに少しずつずらしていることが、空間的にはそんなに大きな効果を出していないのかな?とも思ったのですが、ずんぐり感をくだいた外観にするのにはかなり効果を出しているなと思いました。
湯浅 中からも外がよく見えるしその逆も、ということに、コンセプトの内部で起こるそれぞれの行動がつながっていき、それが周りの風景とも連続していくというのが、じっさいに見てみてよくわかりました。
星野 うすい緑色のガラスも、まわりの緑の風景となじんで連続している感じですね。
百野 周りに馴染ませる意味では、あの場所なら建築の規模もあれくらいが適当だったのかとも思います。
星野 コンパクトな感じしましたね。
新国 そうですね。天井がすごく分厚く感じたんですが、21世紀美術館(ゼミ旅行後に行ってきました)も天井厚結構あったのにそういった印象を受けなかったのはやっぱり縦横の比率がかなり影響しているんだなとおもいました。設備や構造が詰まっているから、頑張って抑えた方なんでしょうね。逆にあの規模の建築をあれだけ開放感出しているのはずごいですよね。
湯浅 一層ごとに少しずつずらしていることで、自由な形態のファサ?ドが強調されているなとも思いました。
星野 あの自由な曲線のプランは、なにを基準に設計しているのかなとも思いますが、妹島さんの事務所でたくさんたくさんの模型をつくってスタディしているんでしょうね。
新国 僕もいつもそれ気になります(笑フあと、フロアを貫くボリュームを入れる時ってスラブが目立つと思うんですが、ガラスと床を少し離す事でその印象を軽減してるのはなるほどなと思いました。
星野 ガラスと床、なるほどー。開放感も、外壁が全然なくて、そのかわりに中で立っている柱もあるけれど、その存在があまり意識に入ってこないように押さえられててすごいです。記憶にはあんまり残っていないです。
湯浅 柱の印象薄いですね。自由な曲線プランに丸い部屋が自由に浮かんでいて、いろんな幅の廊下ができていることばかりが記憶にのこりました。
百野 21世紀美術館と大きく違うのが、三層に重ねているところだと思うのですが、見た目の軽さはむしろこっちのほうが軽かったです。
星野 たしかに、21世紀とはいろいろと比べたくなります。
百野 21世紀はものすごく平面的ですよね。こっちは積層していますが、そこのところでなにか思うことはありましたか?
星野 21世紀の方が厳格で純粋な印象ですね。正円に四角なので。こっちの方は曲線がふにゃふにゃしているし、その自由さがファサードでもよくわかるように、ガラスとフェンスの外周で形を出しているし、積層でずらしているので、かなりくだけた感じ。
新国 意図しているのかしていないのかは分からないんですが、良いスケール感の余り空間みたいのがたまにあってよかったですよね。積層に関してですが、やはり曲面を使う建築には積層より薄い建築を求めてしまいます。というのも、個人的な意見なんですが、平面で柔らかな形をしていても高さが増えれば増えるほど四角いイメージが強くなってしまって、ちょっと騙された気分になってしまいました。
百野 あれが4層5層になるとどんどんイメージが変わりますよね。個人的な感想ですが、あれは断面的な操作がほとんどなかったように思います。唯一大会議室で上下の階が繋がっていましたが、あとはほぼそのフロアのみで完結しているような。
新国 二つの建築の違いとして、横への開放感なのか縦への開放感なのかは大きな違いなのかもしれないと思う。確かに太陽くんの言うように断面や立面はあまり考えられてないような気がしますね。それでも開放感を感じてしまうのはやっぱりガラスを多用しているというのが大きいのかも。それで空間をつなげれるというならどの建築でもやれてしまうし、じゃあこの建築の本当の良さはどこにあるんだろうと、ちょっと考えてしまいました。本当に曲面を使う意味はあったのでしょうか?
星野 確かに、大きな意味がなくて平面での形が大事な場合は、あまり積層しない方がきれいです。それでも積層するときに、大きな吹き抜けをつくって上下をつなげるというのは、よくある解決策という感じも少しあります。曲線を使っていることは、まだよくわからないというか、たしかに、ガラスを使うことにたよりすぎなのか?と思うとそうかなとも思います。ただ、さっき新国くんが言ってた、よいスケール感の余り部分をうまくつくるのは、曲線の方がうまいかもしれないです。
新国 確かに。湯浅 曲線によってできた空間のほうが、回遊感があるというか、歩き回りたくなるかもなともおもいます。
百野 あと、丸い部屋の間を通り抜けるとき、急にすぼまって急に広がる感じはやっぱありました。
星野 うん。新国 そうか。空間にそういう表情を作りやすいという利点があるのかもしれないですね。あと、四角くするとどうしても冷たさが出てしまってガラスをつかうと相乗効果になりかねない。公共施設にはそういった表情(=暖かみ?)が出る曲面は意外とあっているのかな。
百野 暖かみの表情というのはなんか分かります。曲面のガラスは平らなガラスよりも周りの風景を反射して、ガラスでありながら妙に暖かい物質感が出ますね。
星野 浮いているというか、漂っている感じを出すのも曲線がうまくいってるかもしれないですね。
湯浅 そういう浮いているというか漂っているような外観が、個人的には周りののどかな風景には合っていたように感じました。
星野 「中からも外がよく見えるしその逆も、ということに、コンセプトの内部で起こるそれぞれの行動がつながっていき、それが周りの風景とも連続していく」とこや、上下のつながり、曲線に対するイメージが集約して、そのことだけにまっすぐというか、すごく潔くて、妹島さんのイメージがまっすぐに建築に結びついているというところはやっぱりすごい、ほんとにすごいです。
新国 そうだね。じゃあ僕は、星野さんからすごいがいっぱいでたので『うまくやったなー』くらいの感想にしておこうかな。
湯浅 楽しい建築でした。
百野 そうですね。なんといってもあのコンセプトを生かしつつ、周りとの調和を理想としたところが良かったなと思います。(終了)

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2010.8.1-2
豊田市美術館 西澤×濱野×正村×渡辺

正村  何が好きでした?
西澤  場所の強弱みたいなもの。大きくとるところと小さくとるところ。構成のところがうまいなと思いました。
渡辺  エントランス近くのタテのヴォリュームが良かった。あと上の階の線路側にある廊下の飛び出す感じが良かったです。
濱野  私は水とのバランスがすごいきれいだと思いました。あと水平・垂直なところ。
正村  曲線はありませんでしたよね。
濱野  二階から一階に降りられる、映像をみられる部屋とその階段がちょっと感動的だった。踊り場から部屋全体をみたくなるような階段だった。
西澤  意外と敷地に高低差があるんだけど、それをうまく処理してドラマチックに仕上げている。
正村  スロープとか長かったり。
西澤  丸亀の現代美術館とかは今回のと似てる?
濱野  規模は小さいけど現代美術のための美術館という感じ。建物の中に通路みたいなものを作るというコンセプトみたい。
渡辺  丸亀のには行ったことがないのだけれど、谷口さんはメイン空間が一つあって、それを立てるような空間が何個かあるイメージ。メリハリがうまい。
西澤  去年青森県立美術館に行ったことがあって、青木さんのは「一個の部屋に戻ってこい」という感じだったけど、豊田市美術館は導線に従っていけばメインホールに戻れるから迷わなくてすむし、シンプルで優しい気がする。
正村  まとめると、考え抜かれたヴォリュームのバランスと、空間の連続性が美術館をシンプルかつドラマチックに仕立てることを可能にしているのではないかと思いました。(終了)

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2010.8.1-2
愛知県立芸術大学 清水×棚橋×高山×平川

清水  やっぱり講義棟がすごくよかった。ピロティで浮いていて大学のランンドスケープの軸になっていた。あんなに長いのはある意味ズルい(笑)
平川  敷地はかなり贅沢だったけどムサビに似ている印象だった。
棚橋  ムサビとの比較はおもしろいかも。
高山  ムサビは平らだけど、あの土地の起伏がよかった。そのなかで講義棟が中心になっていた。
清水  あのピロティは集まりやすい場所になっていたと思う。駅のホームみたいな?
高山  風が抜けて気持ちのいい場所でしたね。
棚橋  確かに、ムサビのほうのピロティは完全に動線になっているから人がたまれる場所にはなっていないよね。そういう意味では似ているようで違うかも。
平川  ガラスが汚くなっていたけど、本当は建物がレイヤーのように重なってみえていたはず。
清水  建物が見え隠れしながら、キャンパスを歩きまわるのが楽しい場所だった。
高松  敷地の高低差を利用しながらつながっていて、公園みたいに感じた。
棚橋  建物の外形が決まっていないから歩きやすいのかも。
平川  ひとつひとつ違う形をしているから外部が豊かになっていた。
清水  あれが「やせた形」ってことですね。(終了)

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2010.8.1-2
旅行後、各建築についての対談 (2)
訪問建物批評

瞑想の森 清水×濱野×正村×湯浅

正村  「静けさと自然に帰る」をコンセプトに伊東豊雄さんによって設計された葬祭場です。それぞれの感想をお願いします。
濱野  私はロビーの椅子に座って池を眺めていると、違う世界に行ってしまうような不思議な感覚になった。
清水  水盤がきれいだったね。ぽってりとした平面から受ける印象とは違い空間がのびやかだった。それは池の存在が大きく関係していたと思う。
正村  僕はなぜか日本的なものを感じました。その池の存在なのか、素材なのか、スケール感なのかはわからないですけど
清水  奥の方に和室があったりしてそういうところには日本的なものを感じたかな。
濱野  葬祭場っていう場所がそもそも日本的な感じがする。
湯浅  私は図面を見ているとコンピューター的な空間なのかなって思ってたけど、実際はオルタ邸みたいに手作り感を感じた。
清水  あと光がよかった。天井を下から照らす照明が独特で。あれが異世界感に繋がっているのかもしれない。(終了)

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2010.8.1-2
羽島市庁舎 西澤×平川×宮崎

平川 暑かったですね?(笑)羽島市庁舎はスロープに上りたかったですね。
全員 あ? 確かに。
西澤 内部から見ても分からなかったよね。
宮崎 屋根が変な形ってシンボルだったんですかね?
平川 外観が重要な建築のような気がしました。
西沢 市庁舎の場合、制約があるから、外観で好きなことをやったんだと思う。外観といえば、建築の周りに池があって、それが印象的だった。
平川 水といえば、この羽島市は洪水が多かったらしく、坂倉さん自身もそういった環境で育ってきたこともあり、意識して池を使ったんじゃないんでしょうか。それが2階をエントランスにしている要因にもなっていると思いました。
西沢 だから、隣にあった「羽島市勤労青少年ホーム」の外壁もあんなに高かったのかな。
全員 あ?(納得)
宮崎 青少年ホームはスケールと光の感じが良かったです。
西沢 青少年ホームの方は、制約がなかったから、やりたいことをやったように思えた。建具の雰囲気とか内観がすごく良かった。
平川 制約があると、建築表現としては難しいのかと思いました。今後は、制約に対して、新しい価値観を提案していくことが大切なのではと思います。(終了)

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2010.8.1-2
セラミックパークMINO 卯月×新国×百野×渡辺

百野 じゃあ感想みたいなところから始めましょうか。
卯月 僕は漫画のひょうげものにはまってて、古田織部が好きなのですごい期待がありました。森の上を通る長いアプローチや谷の上にあるといった自然との関わりが印象的だった。
渡邊 なるほど。僕は単純に城みたいだなと思いました。すごくプリミティブな印象があります。
百野 ぼくも山の中に入っていくようなアプローチはかなり好きでした。トンネルを抜けるとふっと広がるような。磯崎さんの作品は初めてでしたが、多治見中学校を見た後ということもあってか全体的にスケールが日本人離れしているような印象でした。
卯月 上から下へのアプローチはなかなかないよね。
新国 あの抜ける感じは良かったね。すごいスケールアウトした印象をもったけど、今考えてみると意外と普段都心にいるとまわりにあふれているスケールかもなあとも思った。
卯月 普段のどのような所にあるスケール?構成のおかげで抜けが強調されてたってこと?
新国 始めすごく建物が大きく感じたんだけど、例えば、トンネル抜けた後の屋上みたいな広場から見下げた時とか思ったより地面が近く感じたし、展示室の感じとかは新宿のビルのエントランスホールとかでよくあるなと思ったんだよね。周りに自然しかないから余計にでかく感じたのかな。
卯月 車で向かってるとき建物がそびえてるのをみて確かにすごい存在感を感じたかも。展示室も吊られてたりしてたからなにかスケールとか迫力を感じたね。実際に展示してるのが見れなかったのは残念だったけど。
渡邊 そのような感覚をもたらしたのはやはり工業製品による建築(近代建築)だからではないかなと今少し思いました。つまり、新宿的な感覚があの山奥でもテクスチャーによってもたらすことが出来るのかもしれない・・・。つまりボリューム感ではなく、テクスチャー感がより建築の性質を左右するのでは?ということです。
百野 ものすごく近代的。あの巨大なものが吊られてる感じだとか、中庭の絶えず流れている水なんかを見ても、超人工的というか自然を征服しているような感じがしました。
卯月 そうだね。自然と関わりはあったけど、建物はとても人工的だった。吊ってるのはあの土地に関して合理的な理由なのかな?ハハ谷にかけてる感じ?
新国 吊っているのは免震構造らしいけど。僕は構造には疎いので、なんで吊る必要があったのかは分からないです。
百野 でもたしかに言われてみれば上から吊って成立しているような建築、という感じがしないでもないような。先ほどの上から下へのアプローチ、ということでも。
渡邊 必要性と言うよりは磯崎さんがメカっぽい感じにしたかったのでは
新国 そうだね。しかし、あのでかい建築が自然に配慮と唱いながら谷から吊っていたり人工の川みたいのを作ったりとかなり攻撃的な印象を受けますね(笑)
渡邊 世界を作りたかったんでしょうね!(笑)
卯月 建物ができたのは確か2004年くらいだったよね?当時の磯崎さんスタイルを知りたい。70年代の建物は知ってるけど、その辺りのって全然知らない。
新国 確かに。まだその辺ノータッチだ。あと、ずっと茶室のあり方が気になってて。またスケールの話しちゃうけど、ちょっと土木建築にも繋がるようで結構テクスチャーにこだわりもある感じするのに、茶室を挟んで山の自然と人工のコンクリートが存在するのがすごい異様な印象をもった。何か意図するところがあるのか、ないのか。
卯月 テクスチャーとしてセラミックを主に使ってたから、ほんとにテクスチャーって感じが強くてちょっと表層感が強かったな。茶室からは水面が見えたけどその先に見える建物は存在感が強くて、確かに異様に感じたよ。
渡邊 なんとなくですが、磯崎さんは藤森さん的なオーガニックな建物とは反対のスタンスな気がします。原初の建築の姿、「自然や地域の侵略物」というような像を頭の中に描いているのかもしれない。だからあそこまで明らかなコントラストを持ってきたのではないのでしょうか。
百野 美濃焼きの建築なんていったらそれこそオーガニックなものがまず頭に浮かぶけど。磯崎さんは『セラミックパークMINO』なんていういかにも現代建築って感じの名前にしてああいうものを発表したんですね。藤森さんが設計者だったら全く違うものが出来上がってくるでしょうね(笑)。
卯月 名前からミノの文化を発信するって感じがするよね。展示物が陶器とかだら世界で初の免震システムを取りいれたのかも。
新国 そうだね。勝手なイメージだと、美濃焼と言われると藤森さん、セラミックって言われると磯崎さんって感じ(笑)。というのも、磯崎さんは焼き物のかなり最先端な部分を強調した建築っていうのかな、そういう印象をセラミックパークに持ってきている感じがするんだよね。ハハ免震システムに関して、なるほど。
百野 磯崎さんはやはり世界スケールでものを考えている感じがしますね。そのなかで発信の仕方にものすごく気を使っているような。壊れ易い陶器に免震システムをかけて発表するということにも納得です。
新国 やっぱり、磯崎さんはどんなものに対しても最先端のスタンスで物を作っているんですね。(終了)